■NMNとアルツハイマーについて
アルツハイマー型認知症は認知症のなかで最も多いタイプの疾患です。アルツハイマーは不可逆的かつ進行性であり、ほとんどの場合は60歳以降に発症する高齢者特有の病気です。アルツハイマーの患者では脳内にアミロイド斑とよばれる異常なタンパク質の凝集体がみられ、これにより神経原繊維の変化が生じます。この神経原繊維の変化によりニューロンがうまく機能しなくなり、神経細胞の数自体もどんどん減少していきます。その結果、脳がスカスカになり、特に記憶を司る海馬にまで病変が広がっていくため、記憶や思考能力が失われていきます。日本では50万人以上がアルツハイマーを罹患しており(2014年厚生労働省データ)、その数は年々増加しています。
NMNがアルツハイマーの進行を食い止める可能性が示された良好な研究結果が発表されています1)。500mg/kg/dayのNMNをアルツハイマーのモデルマウスに投与し続けたところ、アミロイド斑の減少や炎症反応の低下が確認され、それに伴って神経細胞数の減少も抑えられるという結果が得られたのです。また、加齢に伴い減少するNADやATPの増加もみられ、「脳の若返り」が観察されました。さらに、脳内の活性酸素の蓄積が軽減しており、NMNには酸化ストレスによるダメージから脳を保護する働きがあることが示唆されました。
つまり、NMNを摂取することで、アルツハイマーの発症を防いだり進行を遅らせたりすることが可能になるのではないかと期待されています。
(執筆:薬剤師 椎田成美)
- Brain Research. July 2016.
Nicotinamide mononucleotide protects against β-amyloid oligomer-induced cognitive impairment and neuronal death.