■NMNとエネルギー代謝について

NMNはニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)という補酵素の前駆体であり、 NMNが体内に取り込まれると細胞内で速やかにNADに変換されます。NADは酸化還元反応を担っており、生体内の500種あまりの反応に関わっている非常に重要な補酵素のひとつです。NADが介在する生体内反応のうち、特に重要なもののひとつにミトコンドリア内でのエネルギー産生があります。ミトコンドリアはあらゆる細胞内に存在する小器官で、酸素を使ってエネルギー源となるATPという物質を生み出す「好気呼吸」を行っています。好気呼吸はクエン酸回路(TCAサイクル)と電子伝達系とよばれる2つの段階から成りますが、NADはこのどちらの過程でも欠かせない存在であり、エネルギーを取り出す一連のサイクルを動かしています。

また、NADにはサーチュイン遺伝子を活性化する働きもあります。サーチュイン遺伝子が活性化すると、細胞内のミトコンドリアが増加するとともに、古くなったミトコンドリアや異常なタンパク質を除去して新しく生まれ変わる「オートファジー(自食作用)」という仕組みが活発化し、エネルギー代謝が促進されます。

米ワシントン大学で、健康なマウスに生後5ヶ月から17ヶ月までの1年間にわたり、NMNを水に溶かして与え続けて観察を行った研究があります1)。同研究では、非投与群、100mg/kg/日投与群、300mg/kg/日投与群の3つのグループに分け、マウスの体重変化を比較しました。マウスも人間と同様に老化により脂肪が増え体重が増加していきますが、NMN投与マウスではこの老化による体重増加の割合が小さく、非投与群と比較して100mg/kg/日群で4%、300mg/kg/日群で9%の体重減少がみられるという結果となりました。なお、NMN投与による副作用は特に出現しておらず、食事摂取量の減少もみられていません。むしろNMN投与群の方が非投与群と比べ、食事摂取量は多かったのです。また、夜間の活動量はNMN投与群でより多くなっており、「よく食べ、よく動く」ようになったといえます。

また、NMN投与マウスでは酸素消費量の増加がみられ、NMNにより好気呼吸が増加することが示唆されました。好気呼吸では糖や脂肪酸を原料としてATPを作り出しているため、NMNを投与することで糖や脂肪の燃焼が活発になったと考えられます。

これらのことから、NMNにはサーチュイン遺伝子を活性化し、生体内でのエネルギー代謝を活発にする働きがあることが伺えます。

(執筆:薬剤師 椎田成美)

 

  • Cell Metabolism. December 2016.

Long-Term Administration of Nicotinamide Mononucleotide Mitigates Age-Associated Physiological Decline in Mice.